【お酒】2264.御前酒 菩提酛にごり酒 火入れ 缶カップ [33.岡山県の酒:33+]
製造者:株式会社辻本店
岡山県真庭市勝山116
品目:日本酒
原料米;岡山県産雄町米100%使用(等外米使用)
原材料名:米(岡山県産)、米こうじ(岡山県産米)
精米歩合:70%
アルコール分:16度
内容量:180ml
杜氏:辻麻衣子(備中杜氏)
(以上、缶の印刷事項より転記)
“御前酒(ごぜんしゅ)”の手印で酒造りをなさっている辻本店さん。
そのお酒は、かつて以下の物をいただいております。
【お酒】1063.御前酒 佳撰 Pカップ
【お酒】1064.御前酒 辛口蔵出冷酒 180ml
【お酒】1065.御前酒 特別純米 萬悦 180ml
なんでも、「2023年、すべての酒に岡山県産雄町を使用する「全量雄町」化を果たした」(※1)のだとか。
雄町と言えば、岡山県を代表する酒米にして、江戸時代から続く古い酒米で、かつ交配をせず優良なものだけを選抜して育成された酒米です。
雄町は酒造好適米として優れているものの、食用米ではないことから、生産量は限られているはずです。
ということは、製造するお酒の全量を雄町だけで賄うことは、その調達からして難しいわけです。
このことについて、同じ文献には以下の記述がありました。
「品種を雄町に絞ることによるリスクヘッジとして原料の調達先を県内7カ所に拡大する取り組みも並行して行い、達成への筋道をつけた。」(※1)
「その副産物となった古い下米や等外米まで余すところなく使い切る試みだ。」(※1)
一方でこのお酒の品質表示を見てみると、
“(等外米使用)”という表示がございましたよ。
それ故、このお酒には、特定名称は表示されておりませんでした。
等外米を使用することで特定名称を表示することはできなくなりますから、いわゆる“普通酒”なのでしょう。
ところで、このお酒、
“菩提酛”を使用しているんだってさ。
おいおい!
菩提酛ってのは、菩提山正暦寺(奈良県奈良市)で造られている酒母のことじゃなかったのかよ!
おそらく、辻本店さんがおっしゃる“菩提酛”は、きっと“水酛”のことではないかと推察いたします。
だって「「菩提酛」は「水酛(みずもと)」ともいい、(中略)その造り方は『童蒙酒造記(どうもうしゅぞうき)』に記載されている。」(※2)とあるとおり、正暦寺の菩提酛は水酛の方法で酛立てされているわけですから。
それに、まさか岡山県に蔵を置く辻本店さんまで、正暦寺から菩提酛が分けられているはずはございませんし。
その辻本店さんの菩提酛には、水酛や正暦寺の菩提酛とは異なる点があるのだとか。
「 ただ、菩提酛は速醸酛と比べて行程が複雑で製造期間も長い。特に、そやし水を生米ではなく麹を水に漬ける独自の方法で造る辻本店の場合、室町時代に奈良で確立された製法の約5倍にも及ぶ時間をかけて乳酸を発生させなければならない。しかも20℃前後の高温で乳酸発酵をさせるとなると、製造時期も限られる。安全醸造面での課題もクリアしなければならない。
そこで麻衣子氏は今期、そやし水の製造を例年より早く開始。本格的な醸造シーズンが始まる前にまとまった量を造り、小分けにして冷凍保存する試みをはじめた。現在の見通しでは「菩提酛7本分のそやし水を4~5回に分けて造れたら今期の仕込み分はまかなえそう」と同氏。最終的には1ロットあたりの仕込みを大きくして対応できれば、全量菩提酛達成の目途が立つ見込みだという。」(※3)
菩提酛や水酛の要であるそやし水の製造方法を改良して工夫するのみならず、その冷凍保存、そして将来的には製造するお酒の全量菩提酛化を見込んでいるとは、菩提酛製造の技術にかなりの自信がおありのようにお察し申し上げます。
そんな菩提酛で造られた雄町使用のこのにごり酒。
そろそろいただいてみましょう。
にごり酒ですから、冷蔵庫で冷やしたものをいただきます。
お酒の色は、ありゃ!
これはにごり酒というよりも、“うすにごり”ですね。
香りは、鼻を近づけるとかすかに酒臭い(ほめ言葉:以下同じ)香りを感じます。
うまみはやや濃いめ。
最初に酒臭さが舌の上にドスンと乗っかり、米のうまみが続くようです。
米のうまみには厚みを少し感じます。
渋みがあって、強くはないものの、鋭さを少し感じます。
キレがよく、うまみ自体に透明感が内在しています。
酸味はややはっきり。
すっぱさは少しはっきりしてはいるものの、それほど鋭くはないみたいです。
酸味の深みも少し感じます。
スーかすか、ピリはなし。
甘みはややひかえめ。
存在はわかるものの弱めで、前には出て来ません。
やや濃醇でちょい渋ちょい深スッキリ旨やや辛口のおいしいお酒でした。
酒臭くてちょい渋ですから、味にちょっとクセがあるかもしれません。
それでもキレがよく、かつ雄町に由来すると思われるうまみ自体の透明感があったことから、クドさは感じませんでした。
酸味はそれほど強くはないものの、深みを少し感じて飲み応えを感じました。
やや辛口だったことも、飲みやすさの側に貢献しているのかも。
ここで、燗で試してみました。
ありゃ!
ぜんぜんちがう。
香りは、米の香りを感じるようになりましたよ。
うまみは米のうまみそのもの!。
酒臭さは引いて、渋みも弱まりました。
酸味は深みが少しはっきりしてまいりましたよ。
キレのよさとやや辛口とは同じ。
燗にすると、米のうまみ満載のおいしいお酒になりました。
燗にしたことで米のうまみがハッキリしたのみならず、酒臭さや渋みが引きました。
これは燗がうまい!
おいしいし、飲みやすい。
冷酒と燗とで味わいがこれほど異なるとは、驚きでした。
(※1)市田真紀『全量雄町×全量菩提酛 まだ見ぬ高みを目指して:辻本店 岡山県真庭市』p,7(酒蔵萬流 39号(2024年冬号)p.6-9 2024 新中野工業株式会社)
(※2)小泉武夫監修『日本酒百味百題』p.27(2000.4 柴田書店)
(※3)(※1)p.8
杜氏さんが女性なんですね。
飲んでみたいな。
by HOTCOOL (2024-10-11 03:32)
シマッタ(><) ビールを飲んでしまいました^^;Aアセアセ
今日みたいな天候は日本酒だと思ったのですが(-_-)
女性の杜氏さん、毛呂山の酒蔵もだったと思います。
御前酒・・・おまえざけって読んでしまいました(^^ゞ
by kontenten (2024-10-11 18:47)
HOTCOOLさん、女性杜氏は昨今では散見されますよ。
御前酒は四合瓶や一升瓶であれば、岡山へ行かなくともデパートやいかにも通好みらしい酒店へ行けば入手できると思います。
by skekhtehuacso (2024-10-11 21:06)
kontentenさん、毛呂へはかつて毛呂美酒カップを探しに出かけたことがございました。
by skekhtehuacso (2024-10-11 21:12)